10種類のシリコン(針入度30から75)を用いて10人の被験者にやわらかさ評価をさせた。評価のさせ方はモデュラスを用いたマグニチュード推定法。その際、指で触れる条件とさまざまな棒で触れる条件を設定した。実験目的はやわらかさ知覚における指先の機械受容器と指、手首等の自己受容感覚の役割を調べることであった。もし指先の機械受容器がやわらかさ知覚に主要な役割を果たしていないのなら、指で触れた条件におけるやわらさか評価値は、棒で触れた条件における指より大きな面積の棒条件と指より小さな棒条件の中間の値を示すはずである。実際、ほぼそのとおりになった。ただ針入度が55より大きなシリコンにおいては、指条件の感度が棒条件よりもやや高かった。この実験より、ここで用いたシリコンを押す場合、やわらかさ知覚に大きな影響を与える生理的メカニズムは、自己受容感覚であることが示唆された。 次に、やわらかさ知覚に影響を与える物理量が何であるかを調べる実験をおこなった。物理量としては、弾性係数(ばね係数)と粘性係数が考えられる。ここでばね係数とは変位と荷重の散布図の傾きのことである。シリコンを面積の異なる棒で押したときのやわらかさ評定値と物理量の関係を調べたところ、ばね係数のみがやわらかさ評定に影響を与えていることがわかった。 これらの実験より、物理量としては物体のもつばね係数が、生理量としての自己受容感覚に与えられ、これが心理量としてやわらかさに変換されるプロセスがあることが示唆された。
|