研究概要 |
学校における緊急事態は,児童・生徒の自殺や事故などにとどまらず,学校内での殺人事件など多様化し,深刻化している.このような現状の中にあって,教師の通常の教育活動における日常の苛立ちごとによる慢性ストレスだけでなく,さまざまな突発的な重大な危機的出来事による急性的なストレスについて対処することが望まれる.そこで,平成15年度は,福岡県臨床心理士会と連携し,緊急支援を行った学校の「現場にいた」教師を対象に事故後の様子と,さらにその後の様子を追跡するために,GHQ-28を支援開始時,介入2週間,1ヶ月後,3ヶ月後,7ヵ月後と反復施行した.その結果をフィードバックすることで,健康感を支援するアクションリサーチを実施した.また,同様の調査を「現揚にいなかった」教師についても行った. GHQ-28のサブスケール別に反応収束過程を分析した結果,どの時点においても「社会的活動障害」において有意に現場にいた教師が強く反応していることが示された.出来事から受けた衝撃の大きさによる影響は,業務の遂行が滞ったり,集中力が低下したりといった社会的活動性により顕著に現れることが示唆される.各サブスケールの収束状況としては,両群ともに時間経過に沿って低下を示し,事故2週間では急性ストレス反応が出現していたが,専門化が早期に介入することで,3ヶ月後には反応が収束した.3ヶ月後と7ヶ月後の間に大きな変化はみられなかった.対象校の7ヵ月以降の状態と,衝撃的出来事がなかった一般の学校との比較を行った結果,有意な差はみられず,対象校の教師のストレス反応は,事故後7ヶ月後で一般学校と同程度までに収束されることが明らかとなった. 以上のことより,多くの教師が他の学校教師と同程度に健康を回復していることから,福岡県臨床心理士会と連携して行った急支援は教師の健康において,二次予防の効果を果たしたことが示唆される.
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