研究課題
基盤研究(B)
本研究は、教師のワークストレスに対抗する健康支援のためのストレスマネジメント案践を学校への緊急支援という切り口からアクションリサーチしたものである。すなわち、研究者側の関心だけに依拠した研究資料の収集や仮説検証型の研究だけでなく、研究対象と直接かかわりながら、しかも援助を目的とする実践を通した研究である。ストレスマネジメントによる健康支援や治療的介入のポテンシャルはかなり高いにもかかわらず、科学的な根拠に基づいたアプローチのシステムづくりは遅れている。今回は、学校の教師の日常の慢性的なワークストレスを分析するとともに、児童生徒を巻き込む突発的な事件・事故に遭遇した教師の危機的で、急性的なストレスへの介入研究を試み、次のような数多くの貴重な知見を得ることができた。1.英国での教師を対象とした慢性的ワークストレスの調査研究職務の裁量権がないと、仕事の満足度が低くなり、心身の自覚症状、とくに抑うつ感が高くなる。この心理的要因は仕事の多忙さとは独立しており、パーソナルコントロールの役割が明らかとなった。2.日本での教師を対象とした急性ストレス反応への介入フィールド研究学校現場において突発的な事件、事故に遭遇したとき、教師の多くが急性ストレス反応を呈する。しかし臨床心理士などの緊急支援チームの介入があると、当初著明であった不眠や身体的愁訴、社会的活動障害などの健康被害が3ヶ月以内に収束することが明らかとなった。本研究の成果が、教師の慢性的ならびに急性的なワークストレスの軽減に向けて、学校現場における健康支援のシステムづくりに活用され、実証に基づくストレスマネジメント学の構築に貢献できたと考える。
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