研究課題
本研究は、教育(発達・臨床含む)、社会といった分野の心理学の歴史について、第二次世界大戦の前後の時期を対象に、社会との関連、制度的整備、学説の受容といった観点から研究するものである。初年度は戦前・戦中期班、戦後占領期班、戦後復興期班の3つに分かれて、その時期ごとの検討を行った。戦前・戦中期班:当時の学術誌の調査を通じて、人種・民族に関する心理学的研究の実態解明に着手した。また、当時の若手心理学徒が創立に関与した児童学研究会、保育問題研究会、教育科学研究会などについてその活動を調査した。戦後占領期班:戦後の教育・社会系心理学の発展を可能にした制度の解明の検討を行った。特に、立命館大学で整理され公開されたGHQ文書のデータベースを用いて、占領軍の政策と教育心理学の展開の関係についての調査に着手した。また、教育心理学のみならず日本の学術復興に大きな力となった「ガリオア・フルブライト留学生」の果たした役割について、現地の情報収集を行いつつ分析に着手した。戦後復興期班:教育心理学における「不毛性論争」を歴史的に跡づけるとともに、戦後のフランス心理学受容の特殊性をとくにワロンに注目しつつ分析を加えた。さらに、研究代表者を中心に、心理学史研究の方法論についての検討やデータの公開に関する理論的検討も随時行った。次年度には、二つの学会においてシンポジウムを開き、研究を公開しつつ討論に付し、報告書にまとめる計画が進行中である。