研究概要 |
山形は英国滞在を通じ海外の表記研究者と交流した。また実験として1)分類課題に及ぼすカード数と有意味性の影響を年少児に調べ、表記知識の文字・数字に対する絵の優位性検討の資料収集、2>表記活動に及ぼす運動制御の役割を描画と数で吟味した。また小森・高木は「かく」行動の運動面検討のため、曲線を使った図形模写を行った。幼児期特有のかき方の変更を確かめるために、見本上で描き方を例示したり、見本図形を色分けし視覚的に変化させた図形を用いた結果、提示や見本の色分けにより、通常と異なるかき方でかく幼児が出現し、年齢特有のかき方だけでなく、幾つかのレパートリーを持つことが示された。古池は4、5歳児66名を対象に、円筒形と直方体描画課題での描画過程を分析した結果、年長児では1)立体外形の輪郭線を描いた後で中を分割する、2)各面を描き終わらない内に他面を描き始める、3)直方体の見えている3面の輪郭線が滑らかに接続する描き方が見られた。以上から4歳児は1面完成後に次面を描き始め、統合的なモデルのイメージを意識せずに描画すること、5歳児では予めモデルの統合的像をイメージし、適宜描画過程を組み替えて描くことが示された。高橋は3-5歳児78名に,1)絵本の読み聞かせ後に1場面を提示し,セリフを「かく」ことを求め,2)自分の名を書かせ,3)リストから自分の名を選ばせ、表記知識を測定した。その結果セリフを疑似文字で表現しても自分の名は正確に書く子や、自分の名も疑似文字でかく子も存在する。またセリフを「かけ」なくても名前なら書けたり,疑似文字で表現する子もいる。本結果から,幼児の表記知識は表現対象と独立に測定できないこと,表現できないことが表記知識の不存在を示すものではないことが示された。秋田は5歳児40名の計数能力と数式表記能力の関連を調べ、桁概念の誤りと演算記号の未出現から、表記と計数操作の独立性、発達経路の複数の可能性を示した。
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