研究分担者 |
笠原 正洋 中村学園大学, 家政学部・児童学科, 助教授 (10231250)
田嶌 誠一 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (70163459)
丸野 俊一 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (30101009)
大隈 紘子 大分県精神保健福祉センター, センター長
後藤 晶子 国立肥前療養所, 情動行動障害センター・臨床研究部, 研究員
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研究概要 |
H13年度は次の4点の検討を試みる. 1.潜在的児童虐待被害の実態調査とその心への影響の調査.大学生を対象に,5つのタイプの虐待(身体的,心理的,性的虐待,ニグレクト,DV目撃)について,18才までに親からどのくらいされたことがあるか,さらに平行して心への影響を測定する尺度を実施している.現在までに約500名のデータの収集が完了した.またその相関分析を行っている.(なお,次年度はさらに500名のデータ収集を予定している.)また,現在,申請書で提案している「潜在的児童虐待被害者」スクリーニング尺度(仮名:重複被虐待経験調査表)を,1の結果にもとづきながら考案中である. 2.潜在的児童虐待被害と「イイ子」行動特性(行動抑制)との関連.女子学生201名を対象に、1で用いた虐待項目と心理的健康度および行動特徴(衝動制御、イイ子行動特性)との関連を検討した。両測度の相関関係を分析した.その結果,重度の心理的虐待が青年期の心的健康度と関わりがあることが推測された。ただ「イイ子」を演じるという行動傾向と被虐待経験との予想された関連は認められなかった。 3.虐待的家庭環境と「甘え」.家庭内での被虐待経験が,現在の甘えの欲求や抵抗感にどのように関係しているかを検討した.大学生305名への質問紙調査の結果,母親の暴力的行動をより多く経験している者は,甘え場面での他者観がよりネガティブになる傾向がみられた.また過去での親とのやりとりの質と現在での親への甘え欲求・抵抗感との関係では,理論的に想定される甘え行動タイプに特有のパターンが示唆された. 4.精神科通院者の被虐待歴の調査 某国立療養所(精神科)の通院患者を対象に児童虐待経験の実態を調査した.その結果,平成13年10月1日時点での全通院者の約1.3%(33名)の患者が,何らかの虐待を経験していた。性別,診断名(ICD-10),虐待種類,加害者などとの特徴を分析した.
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