| 研究概要 |
本研究の目的は,生態学的自己の発達と障害の観点から,見ることと動くことの関連性について検討することであった.光学的流動による姿勢への影響を検討するために用いた独立変数は,フェイス・マウント・ディスプレイ,スクリーン上への流動パターンの提示,傾く部屋であった.さらに被験者内の身体の操作性の変化を生み出すために用いた独立変数は,バランス台と動作法であった.従属変数はHigh Reso Mat Systemにより測定された身体動揺と身体動揺に関する主観的評価であった.主な結果は以下の通りである.
1)組織化過程と情動との関連
本研究の主な知見は,立位姿勢を保持するという生理学的な現象が情動と密接に関連していることであった.脳性まひ者を被験者とした研究では,光学的流動が転倒への怖れという情動反応を引き起こしていた.また,立位姿勢の安定という組織化は,身体操作だけでなく対人関係での意欲的なかかわりを生み出した.さらに内省報告から,障害のない被験者がバランス台上で緊張していたことが明らかとなった.
2)動作法による生態学的自己の組織化
被験者が身体の操作性が増し,実際の動きに対する主観的な評価が正確になったことから,動作法はまさに人と環境との相互作用としての生態学的自己の組織化の過程であると結論づけることができる.そのときに動作法は,意識下での感覚情報を重みづけを行う身体準拠としての機能を果たしていると推測される.
3)生態学的自己の組織化の力動性
発達の過程でみられる組織化はダイナミックな過程であり,その過程の力動性を検討するためにはダイナミックな光学的流動を提示する装置を用いて身体動揺の変化を調べるための実験装置の開発が必要である.
|
