本年度は、前年度に実施した中華航空機遺族に対するアンケート調査および「死別に関する無作為抽出調査」の分析をさらにすすめるとともに、1998年にほぼ同じ遺族グループに対して実施したアンケート調査の結果と比較検討する作業を行った。全般的には、航空機事故遺族が、事故後9年を経過した時点でも、GHQやIESの得点で見る限り、死別の衝撃が持続していることが明らかにされた。一方、余暇活動の比較に関しては、初回調査の時点よりも積極的に関わる方向に変化している傾向も認められた。 これまでに収集した海外の航空機事故遺族に関する文献を詳細に検討し、道路交通事故、自然災害被災者遺族との共通点、相違点についてまとめる作業を行った。 遺族の回復過程には、裁判の進行および各遺族の裁判への取り組みの姿勢が密接に関わると思われるので、この点を明らかにするために担当弁護士に面接調査を実施、有用な情報を得た。また、最終年度にあたり、これまでの研究の総括を行い、さらに航空機事故が起きた場合、遺族に対してどのようなサポートが望ましいかについて検討を行った。同時に、遺族へのサポート体制が整っている米国の制度について情報を収集し、検討材料とした。 プロジェクトの中心部分である航空機事故遺族に対するアンケート調査結果は、日本トラウマティック・ストレス学会で発表し、さまざまな領域の研究者から貴重な示唆を得た。
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