研究概要 |
ここ数年で日本でもインターネット利用は急速な普及を遂げている。昨年までの調査研究では、インターネット利用に関し、利用者の社会属性的な偏り(デジタル・デバイド)が存在することが指摘されていた。また、米国の研究では、インターネットの利用頻度が増すにつれ、家族や近隣との交流が少なくなり、孤独感、抑鬱傾向が増加するという側面も報告されている(インターネット・パラドックス)。こうしたデジタルデバイドやインターネット・パラドックスの日本における実態を探るために、日本全国を対象に質問票調査を実施した。調査対象は層化二段無作為抽出法で得られた12歳から69歳までの男女1, 878票(有効回収率62.6%)である。 調査の結果、インターネットの個人利用率は現在42,9%と4割を超えていた。また、利用率の男女格差は急速に縮小しているが(男性47.7%、女性38.3%、全体42.9%)、年齢別では20代の67,6%をピークに年齢が若いほどよく利用しており、50歳代(20.3%)、60歳代(11.1%)の利用率は依然低いこと、高学歴・高年収の人ほど利用率が高いこと等が明らかになった。 また、インターネット・パラドックスに関し、今回の調査では、(1)孤独感、(2)抑鬱性傾向、(3)共感性、(4)家族の絆、(5)社会的スキルの5側面に関して複数の質間項目を設定し、それぞれスケール化してインターネット利用/非利用、および利用頻度との関連を分析した。その結果、5つのスケールすべてにおいて、インターネット利用者と非利用者では有意な差はなく、また利用者の中でも利用頻度と有意な相関をもたないことが明らかになった。すなわち、インターネット・パラドックスの一部は日本においては妥当しなかった。
|