研究概要 |
1.インターネット利用の実態を明らかにし、精神的健康や社会的ネット形成等への影響を明らかにするために2001年11月に実施した調査にもとづき、データ解析および結果の総括を行なった(全国12歳から69歳の男女対象。N=1,878)。その結果、インターネットの個人利用率は52%と半数を超えていた。利用率に関しては、数量化2類分析の結果、性別ではほぼ格差は解消していたが、年齢、学歴、年収に関しては、依然大きな格差が存在していた。また、インターネット・パラドックスに関し、(1)孤独感、(2)抑鬱性傾向、(3)共感性、(4)家族の絆、(5)社会的スキルの5側面に関して、インターネット利用/非利用、および利用頻度との関連を分析した。その結果、5つのスケールすべてにおいて、利用者と非利用者では有意な差はなく、利用頻度に関しても有意な相関をもたなかった。さらに、高頻度利用者の方が友人数が多く、家族との会話時間に関しては、数量化I類分析の結果、インターネット利用の影響力は、職業や年齢、性別などに比べ少なかった。すなわち、インターネット・パラドックスは日本においては妥当しなかった。 2.インターネット・コミュニティや、メッセンジャーなどの新たなコミュニケーション・ツールが対人関係に及ぼす影響を明らかにするために、首都圏所在の大学生を対象に質問票調査を実施し、比較のため韓国の大学でも調査を実施した(N=487(日本),490(韓国))。その結果、BBSなどのコミュニティサイトを「l日1回以上アクセスする」と答えた人が日本は32%に対し、韓国は74%、メッセンジャー系を利用すると答えた人は日本が19%に対し、韓国は91%と両国に大きな差異が見られた。利用内容についても韓国はコミュニテイサイトを積極的に活用して新たな人間関係を築いているのに対し、日本では消極的利用が多かった。この調査に関しては、今後継続して詳細な分析を進める。
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