研究概要 |
(1)過疎化・高齢化によって、急速な対応を迫まられている中山間地帯の柵田維持に関して、本研究において,次の知見が判明した。(1)柵田維持は、専業・兼業等の農業経営形態ではなく、同居の世帯員数の大小によって、大きく影響を受ける。(2)同居世帯員数が小さく、高齢化している農家でも、他出している子供達が援農に来ている農家は、柵田をかなり維持している。(3)援農に来る他出の子供達の属性は、男・女の性別や柄続、職業などは相関せず、居住地(実家との距離)と大きく関係する。以上、3つの知見から、中山間地域の柵田維持政策は、石垣保修の補助金や柵田米への補助金と云った農学・農政的対策だけではなく、家族・世帯の定住化や他出子弟との交流・関係のあり方と云った社会政策的対策が極めて重要となってくる。 また、中山間地域では、近年、独居世帯、夫婦二人世帯と云った極小世帯が急増し、集落によっては、全世帯の6割が3人以下の世帯になっている。この世帯の極小化は、今後農地や山林の相続、維持問題が急務の課題となりつつある。集落によっては、柵田、山林の撤収を具体的に考える必要も発生している。 (2)日韓国際比較研究の知見。現在、韓国では「身土不二」「農都不二」と云ったスローガンの下に、環境型農業の促進が国家課題として進められている。アイガモ農法、減農薬農法、EM農法等、日本の有機農法の技術が展開されている。日本では、減農薬農法を除いて、アイガモ農法、EM農法等は、一部有機農業者のネットワーク的運動にすぎないのが、何故、韓国では政府・農協等の主流派が、国家的規模で取り組むようになったかは、極めて重要な研究課題であり、環境担い手の育成システムも含めて、日韓の相異を明らかにしていきたい。
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