研究概要 |
本研究では、まず農業における環境破壊の原因を、単に生産技術の近代化などの外部要因に奥だけでなく、農民の過重労働からの開放や兼業化による農作業時間の短縮など内部要因にも求めた。それ故、環境維持の担い手も合鴨農家のように、農業を生産技術、経営、安全性、社会変化など有機的全体的連関性を主体的に把握できる人々によって担われていることを明らかした。同時にその農業者類型も構築した。また、「食と農」から見た安全性や環境問題は、単に生産者だけでなく、多くは消費者の行動によって規定されていることを明らかにし、その生産者類型を提示した。最大の知見は、近年の行政を軸とした「食と農」の安全性キャンペーンの中で、意識は安全性指向だが、行動は安ければいいと言う分裂型消費者が急増し,『風評被害』の温床となりつつある。 ついで、現代農山村の家族・世帯の極少化を軸に、地域社会や環境問題の担い手に関する考察を行った。最大の知見は、日本の総世帯数4,400万世帯の内、25.6%が一人世帯、23%が二人世帯、18.5%が三人世帯と超極少化が進んでいることである。これは、都市、農村を問わず全国的傾向であり、21世紀の日本社会の最大の弱点になると予測される。高齢化や少子化だけに目を向けているのではなく、社会の根幹組織である家族・世帯のあり方について本腰を入れて研究・対策を講じなければならい。その為には、20世型パラダイム【人口増加をベースに、農村から都市への労働力の移転、および経済を軸とした生産力論的社会システム】では対応できない。人口減少を基調とながらも、家族世帯の意義と機能を再構築し、人生80年時代を緩やかに生き抜いていくためのパラダイム構築が急がれる。その為に、これからの研究を続けたい。
|