研究課題/領域番号 |
13410055
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
芳賀 学 上智大学, 文学部, 助教授 (40222210)
|
研究分担者 |
山田 真茂留 立教大学, 社会学部, 助教授 (20242084)
佐藤 郁哉 一橋大学, 大学院・商学研究科, 教授 (00187171)
|
キーワード | 学術出版 / 出版業界 / 学術界 / 新制度派組織理論 / 制度固有のロジック / 経済資源 / 象徴資源 / ポートフォリオ |
研究概要 |
初年度である今年度は、文献レビューおよび予備調査と現場観察を中心にして、基礎的な資料を収集するとともに、次年度以降に予定している本格的な実証研究のフレームワークの構築につとめた。特に、出版・書籍流通業界一般の動向という構図の中に、学術研究の成果の公表と流通において重要な役割を果たす学術出版の現状の位置づけを明らかにする作業を進めてきた。その結果、以下のような点が明らかになった。 1.売上の落込み.名門出版社や中堅取次業者の倒産ないし業務停止などに象徴されるように、出版業界はさまざまな局面で重大な転機を迎えている。特に学術書籍における売上低下は深刻な事態を迎えており、それは、主要な出版社が存在する首都圏、関西圏などで顕著な傾向であることが観察された。 2.理論的枠組みとしての新制度派組織理論.文献レビューの結果、新制度派組織理論が今後の実証研究を進めていく上で有効な視点を提供することが明らかになった。特に、「制度固有のロジック」概念が、学術出版をめぐる文化性と商業性のバランスについて分析する上で有効であることが確認された。 3.経済資源と象徴資源の「ポートフォリオ」.出版関係者に対する試行的な聞きとりの結果は、学術出版を専門とするいわゆる「硬派出版社」においては、その出版ラインナップにおいて、経済資源と象徴資源の間での均衡をめざすポートフォリオ的発想が見いだされることが確認された。 4.ポートフォリオ構成におけるサブセクター間の相違.聞きとりの結果は、学術出版セクターの中でも、特に原報モノグラフに重点をおく中小の出版社においては、より象徴資源に重点をおいた経営方針がとられていることが確認された。 5.学術界ネットワークと出版界の関連性.聞きとりの結果は、著者サイドにおいても、しばしば著作刊行物のあいだでポートフォリオ的発想が見られることが確認された。
|