(1)旧石器時代における遺跡構造と立地に関する研究 a.環状ブロック群は、主要器種と石器石材の分布を分析すると各石器ブロックは明らかに均質であり、したがってそれらはいくつかの集団ではなく、単一集団に属すると見ることができる。b.静岡県箱根・愛鷹山麓で発見された落し穴は、山の高所と山麓の間を移動するシカの群をねらったものと考えられる。c.旧石器時代の住居として報告された遺構のうち、少なくとも3つの遺構は旧石器時代には属さないか、竪穴住居の証拠をもたない。d.縄文竪穴住居の起源は、旧石器時代末期から縄文時代初頭に本州へひろがった北海道の細石刃文化と神子柴文化のテントまたは小屋にあるとみられる。 (2)第四紀更新世の哺乳動物化石の調査 a.高知県初平ヶ岩屋洞窟で発掘調査をおこない、上部の堆積層では、縄文早期の文化層がK-Ah火山灰層によって覆われており、下部堆積層では厚い水成層がわずかな哺乳動物化石を含んでいることを確かめた。b.岡山県足見NT洞窟の発掘調査では、中期更新世に属するイノシシなど多数の動物骨を発見した。 (3)旧石器時代の居住様式と狩猟に関する日本とフランスの比較研究 a.フランス人海外研究協力者がこのテーマに関する論文を執筆した。b.それら論文を参考としつつ、日本で発見された落し穴から推測されるシカの標高差移動を、南西フランスにおけるトナカイの短距離移動に対比した。逆に、フランスと日本とのあいだでは、旧石器時代からポスト旧石器時代への移行時における定住化の発展に大きな違いがみられる。
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