古墳時代の王権と地域の関係を、前方後円墳の設計から追求する本課題においては、複数の課題を立てて研究を進めた。1)まず、基礎データの収集作業として、前方後円墳データベース約5000件を作成した。これに測量図の映像を組み込むこと、地図データへのリンクが、次年度の課題である。2)王墓の詳細な資料収集は、検討会を数回にわたって実施し、古墳時代前期について終了した。3)王墓の測量図のデジタル化は、JISソフトを導入し、箸墓古墳について試行した。4)王墓の変遷の解明については、桜井市の茶臼山古墳(200m)とメスリ山古墳(250m)の測量調査を実施し、後円部3段・前方部2段の系列について、詳しく検討する資料を整えた。成果報告を次年度に行う。5)王との関係が一代ごとに更新され、歴代の王墓の相似墳が築造された点の検証については、大阪府柏原市の玉手山古墳群を選択し、7号墳の発掘調査、2・3号墳の測量調査を実施した。その結果、3号墳が箸墓古墳ないし西殿塚古墳の相似墳である可能性があること、7号墳が柳本行燈山古墳(伝崇神天皇陵)の相似墳であることを確認し、大きな成果を上げた。この成果については概報を発表した。次年度の本報告にむけて、図面・写真の整理、出土した埴輪の遺物整理をほぼ終了した。6)また、播磨地域をケーススタディとすることとし、姫路市壇場山古墳の測量調査を実施し、仲津山古墳の2分の1規模の相似墳であることを確認た。今後、三木市の愛宕山古墳の測量を実施して、播磨地域の古墳群の消長を、前方後円墳の築造規格から検討する予定である。7)全国の前方後円墳の踏査、研究会の実施は、今年度は、三重県、岡山県・東京都の一部について行った。
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