1、まず前方後円墳の規模が、漢尺の6尺1歩の歩であることを確認した。王墓は、墳丘の枠組みあるいは各部寸法が10歩あるいは20歩という単位で築造されていること、さらに中小の前方後円墳もすべて墳丘規模が5歩単位でランキングされていることを明らかにした。 2、畿内の大型前方後円墳の変遷について、これまでの形態的な検討に加え、実寸にもとづく設計レベルでの議論が可能となり、前期の王墓について既に漢尺による歩で割り付けを確認した。なお、測量を実施した大型前方後円墳である桜井茶臼山古墳の測量報告書を準備しており、検討会を通じてその位置づけが明確になってきた。引き続き、メスリ山古墳の測量報告書にも着手する予定である。 3、畿内の大型古墳群の分析については、なお中期については資料収集の段階であるが、前期については、年代的序列を明確にし、オオヤマト古墳群から佐紀古墳群への推移のプロセスを検討した。 4、特定地域のケーススタディとしては、引き続き河内地域の玉手山古墳群(大阪府柏原市)に加え、和泉地域・播磨地域の研究を進めた。とくに玉手山古墳群では、3号墳の発掘調査を実施し、大王墓である西殿塚古墳の相似墳であることを確かめた。これにより、地域の有力豪族が、歴代の大王墓の規範にもとづいて相似墳を築造し、王権との政治的関係を更新していることを実証できる見通しがえられた。最終年度は、さらに玉手山1号墳を調査し、さらに播磨地域の前方後円墳について実地調査を含む検討を進める予定である。
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