研究概要 |
4カ年計画の2年目にあたる本年度は、(1):和同開珎研究史の整理、(2):研究集会「わが国鋳銭技術の史的検討」の記録集の編集と刊行、(3):富本銭の鋳造技術の復原的研究、(4):中国鋳銭関係図書資料の収集と翻訳、(5):研究集会「古代の銀と銀銭をめぐる史的検討」の開催、(6):無文銀銭の資料収集を計画した。 まず(1)では、江戸時代以来の膨大な研究の全体像を把握すべく、和同開珎に関する文献資料の収集を続け、学説を編年的に整理し始めた。この作業は,天武紀の銀・銅銭をめぐる研究の流れと密接に関連しており、研究史の総合化は、最終年までかかるものと予想される。(2)の研究集会記録集は、『わが国鋳銭技術の史的検討』と題する冊子(A4判本文202頁)を平成15年3月7日付けで刊行した。(3)の富本銭の鋳造技術の復原的研究は、富本銭の枝銭を古代の技術に近い形で鋳造することに成功し、奈良文化財研究所50周年記念展覧会『飛鳥・藤原京展』の展示品として、研究成果を一般に公開することができた。(4)の中国鋳銭関係図書資料の収集と翻訳は、古代中国の鋳銭技術に関する文献の収集と翻訳を行ったが、入手困難な文献も多く、来年度以降も作業を継続する予定である。(5)の研究集会「古代の銀と銀銭をめぐる史的検討」は、2003年3月8・9日の両日にわたって奈良文化財研究所で開催し、考古学、古代史、冶金学、分析化学、流通経済史、権衡制度研究者など30名ほどで、古代の銀の貨幣的使用と銀銭の問題について総合的な検討を行った。研究代表者は、(6)の無文銀銭の資料収集結果をもとに、「無文銀銭の再検討」と題する研究報告を行い、無文銀銭の研究史の整理、出土無文銀銭の分析を通して、無文銀銭が1分に重量調整された物品貨幣で、実際の使用時には両目の不足分に銀片を添えて使用された秤量貨幣であること、そしてその製作地が新羅である可能性について報告した。同時に、古代の銀に関する文献史料を調査し、「日本古代銀関係史料集稿」を作成した。次年度に研究集会の記録集の編集と刊行を予定している。
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