江戸豊後系三流の一つ清元節は、三流の中では清元節はもっとも遅れて成立したためか、正本・稽古本の量が常磐津節・富本節に比べて少ない。したがって、周辺資料も重要である。本年度は、まず、撮影済みの石水博物館所蔵の役者評判記(1121丁)を現像し、引き延ばし・焼付けを行った。しかし、文献資料の撮影にはデジタルカメラの方が資料の収集・管理・研究において優れているので、以後はデジタルカメラを使用。石水博物館所蔵役者評判記(7829丁半)、愛知教育大付属図書館所蔵の役者評判記(6984丁半)を調査収集した。東京方面においては、上野学園日本音楽資料室・早稲田大学演劇博物館・東京都立中央図書館日比谷文庫・江戸東京博物館を中心に清元節の正本・稽古本及びその周辺資料を調査し、可能な限り収集した。さらに、収集した資料は、曲別にカード化、スマートメディア及びM・Oで集中管理することにした。また、このような芸能研究は、単に文献資料だけでは不十分で、上演形態(語るという形態、節回しと三味線の手)による研究が不可欠である。したがって、DVなどビデオによる上演形態の資料収集をも併せて行った。これについては、清元のみならず、関わりのある、常磐津・長唄・義太夫の演奏、及び、踊り(日本舞踊)も収集した。これらにより、曲節間の相違、或いは同一曲(作品)においても太夫により微妙に語り口に相違があること、同一人でも年齢により節回しなどが変化すること、舞踊の流派によって同一曲でも踊り手のきっかけが異なることが判明した。ただ、太夫・三味線方、曲の評判については、評判記などに記されたものは数量的に非常に少なく・近世においても役者ほど関心が高くなかったことを窺わせる。
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