研究課題/領域番号 |
13410135
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鍛治 哲郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30135818)
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研究分担者 |
高橋 宗五 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10134404)
川中子 義勝 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60145274)
臼井 隆一郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90092668)
安岡 治子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (90210244)
高田 康成 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10116056)
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キーワード | ドイツ理念 / ヨーロッパ理念 / カール・シュミット / ドイブラー / シュヴァービング |
研究概要 |
本研究の目的は、それ自体多様な歴史的内実をもつドイツ理念とヨーロッパ理念の相関関係という問題を説くに20世紀における展開を中心に、今日的視点で整理し直し、今日のヨーロッパ統合およびヨーロッパと他の地域との関係を見直す視点を確保することであった。 最終年度に当たる今年度は、カール・シュミットの研究に置いた。カール・シュミットは一応、公法学者とされているが、文学思潮に対する深い造詣を有し、汎カトリックの思想基盤に立つヨーロッパ有数の思想家であると同時に、その活躍した時代が丁度、ナチズムの時代に当たり、ヒトラーの桂冠法学者としての20世紀におけるドイツとヨーロッパの理念の相関関係を体現する思想家である。数回の研究会とシンポジウムにおける討論の中で、カール・シュミットのいわゆる表現主義的政治学を正当に評価するためには、文字通り表現主義を代表する詩人の一人であるテオドア・ドイブラーの『北極光』をはじめとする詩作品をカール・シュミットがいかに評価しているかを問題にする必要があることが明確にされた。これらが今日的グローバリゼーションの世界におけるドイツないしヨーロッパ的広域秩序の問題に直結しているからである。さらに、ミュンヒェン・シュヴァービングを震源地とする母権思想はカール・シュミット自信も自覚していたように、彼の男性的父権的政治思想の対極をなしていること、ベルリンを本拠とする男性同盟的ドイツという思想とミュンヒェンの母権思想の対比が20世紀初頭のドイツにおけるヨーロッパ理念の対極であることなどが明確になった。 さらに、ドイツにおけるドイツ理念とヨーロッパ理念、および19世紀以来のドイツの東進運動(政策)がロシアや旧東欧諸地域に与えた影響についても研究し、そのなかで今日のロシア・旧東欧地域のヨーロッパ理念がドイツのそれに大きく影響を受けながらも、それに対抗するものとして形成されてきたことが検証された。
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