研究概要 |
■本研究プロジェクトは,アヘン戦争以後役150年にわたる英国の植民地としての歴史を経て,1997年に中国に返還された国際都市香港で使用されている広東語を,語彙論・文体論・文法論および社会言語学的側面から動的・多角的な分析を行ない,現代香港広東語の成立に到る歴史的諸側面を視座にしつつ,主として語彙の機能と構造を中心に立体的な記述研究を行ない,得られた研究成果を代表者の編纂する『香港広東語辞典(仮称)』に集約させ,新しい世代の広東語学習者の便宜に供することを目的としてスタートした。 ■研究業績としては過去3年間,年に一度「粤語文化研究会」という名称のシンポジウムを開催し,わが国における粤語文化研究の専門家による活発な討論の場とすることができた。その成果は毎年『粤語文化研究論集』という論文集に編集し,これまで年度ごとに3冊刊行した同論集には全部で18編余の論考等が載せられている。本研究プロジェクトの最大の成果は研究代表者による『現代香港広東語語彙の記述的研究』である。該書はこのプロジェクトに参加してくれた研究分担者ならびに研究協力者の支持・援助を得て,総見出し数約4万語という現在までのところわが国最多,世界的に見ても最大級の香港広東語辞典として結実したものである。本辞典の特色は,広東語発音ローマ字表記により語をアルファベット順に配列し,それぞれに品詞分類を行ない,的確な用例を示す例文を付し,機能語にかんしては必要に応じてその文法的特徴と機能を詳述した点にある。さらに多くの人にこの研究成果を利用していただけるよう,デジタルデータ化して電子テキストとしての利用が可能になるように準備を進めている。
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