研究課題/領域番号 |
13410144
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
西 成彦 立命館大学, 文学部, 教授 (40172621)
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研究分担者 |
中本 真生子 立命館大学, 国際関係学部, 講師 (80330009)
西川 長夫 立命館大学, 人文科学研究所, 教授 (00066622)
崎山 政毅 立命館大学, 文学部, 助教授 (80252500)
細見 和之 大阪府立大学, 総合科学部, 講師 (90238759)
岡 真理 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (30315965)
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キーワード | 植民地主義 / 二重言語使用 / グローバル化 / 英語圏文学 / アバンギャルド文学 / 声の文化・文字の文化 / 移民現象 / 文化本質主義 |
研究概要 |
二年次目にあたる今年度は各分担者ともに研究の具体化および深化に努めた。 まず、昨年の補助金を用いた海外出張の成果を西川長夫・崎山政毅の二人が中間報告し、フランス領アンチーユのマルチニックとペルーといったいずれもアメリカ大陸の文学活動の中での「国語=公用語」と「バナキュラー言語」の二重言語使用とアヴァンギャルディズムの関係についての議論に端緒を開いた。また本年度の外国旅費を用いてレバノンへの調査旅行を果たした岡真理には、パレスチナ難民キャンプにおける言語状況を証言の聴き取り活動を通じて調査してきた成果を研究会の場で披露してもらい、その内容の一部はすでに論文化されている。以上のように、本年度は各自の研究成果を中間段階で発表し、その発表をもとにインテンシヴな議論を重ねる形が中心であった。 その他、海外旅費を用いて招いた米国ハーバード大学のホミ・バーバ氏を囲んでの研究会では、英国や米国のような多文化的な社会の中で、周縁的な存在が果たすべき役割についての発表を手がかりに、グローバル化した英語主導の世界の中での英語使用の射程をめぐって活発な議論を行い、また、研究分担者以外から、立命館大学政策科学部の田林葉さんを招いた研究会では、ネイティヴ・アメリカンの英語使用(英語による自伝的表現活動)の持つ意味についての発表をもとに、「帝国の言語」の中にマイノリティーの言語が食い込んでいくことの多層的な意義について議論した。現代社会および現代文学の中での英語の機能は本共同研究が最も重点を置く研究対象のひとつであり、きわめて有意義な会がもてたと自負している。 その他、研究代表者の西は、国際交流基金の派遣教員として滞在したサンパウロおよびブエノスアイレスで、移民系ブラジル文学(日系文学を含む)に関して多くの資料を収集し、次年度以降、その成果を論文にまとめる予定である。従来の文学研究が地域地域のドミナント言語の伝統性を個別作品の中に発見していくという文化本質主義的な傾向を強く持っていたのに対して、マイノリティーがドミナント言語を用いて表現するという実践の中に、脱本質主義の可能性を見出すという本研究の目標は、かなりのところまで達成可能だという希望が見えてきた。
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