研究課題
今年度は、年次計画通り、まず、各担当者が具体的な研究対象を選定し、それぞれのテーマにそって文献を収集しながら、既存資料と先行研究を整理した。具体的には、鈴木貞美と劉建輝が海外研究協力者である呂元明氏(中国東北師範大学教授)の協力を得て、旧満州の新京(長春)で発刊された日本語文芸雑誌『満州浪曼』を発掘し、その全八巻に収録されている小説、評論、詩歌に注釈を施しながら、作者像を含む雑誌そのものの全容解明も進めている。また稲賀繁美、竹村民郎、上垣外憲一、劉岸偉、孫江がこちらも海外研究協力者である厳安生氏(中国北京日本学研究センター教授)の協力を得て、大連図書館(前身の一つが旧満鉄図書館)、天津図書館(前身の一つが旧天津日本人図書館)等の海外図書館と一部の国内図書館を調査し、それぞれの分担課題に即した多くの一次資料を取得した。中でも稲賀繁美、竹村民郎、孫江がすでにその一部を論文作成に使用し、別紙のように研究成果を公刊している。次に、各担当者及び海外研究協力者間の連携と情報交換をはかるために、今年度はまた二回の国内研究集会と一回の国際研究集会を開催した。国内研究集会では、鈴木貞美が「『満州』研究の回顧と展望」、劉建輝が「『満州』幻想の誕生--明治・大正期における諸ジャンルの言説を中心に」、孫江が「旧『満州』の『秘密結社』(宗教結社)と日本」、竹村民郎が「大連における廃娼運動--日本娼婦の状態に関連して」をそれぞれ発表した。国際研究集会では、中国から呂元明(東北師範大学教授)、邵建国(北京外国語大学助教授)、李輝(人民日報主任記者)の三氏を招いて、旧満州の文芸、交通、メディア等の課題について報告してもらった上、国内のメンバーを交えて活発な議論と意見交換を行った。以上のこの一連の調査と研究の実績をより具体化すべく、今年度はさらに二つの出版機関の協力を得て、前出の『満州浪曼』の復刻(ゆまに書房)と研究集会の報告集(勉誠出版)をそれぞれ公刊する予定となっており、目下はその準備を進めている。
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