研究分担者 |
安西 文雄 立教大学, 法学部, 教授 (90222356)
長谷部 恭男 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (80126143)
江口 公典 上智大学, 法学部, 教授 (50135927)
橋本 博之 立教大学, 法学部, 教授 (80172873)
鈴木 秀美 日本大学, 法学部, 教授 (50247475)
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研究概要 |
「情報技術革命(IT革命)」の中における電気通信・放送・情報に関する公的政策・法制度のあり方を探るという課題に対し,第一に,従来の放送制度のキーワードである「放送の公共性」と、そこから立てられた各種の放送固有の法的仕組みは,基本的に今後も維持されるべきである。特に,「放送の自由」を支える制度は,民主主義社会の基礎的条件とも評価されるのであって,放送のデジタル化等の状況変化によって変更されるべきものではない。ただし,「通信と放送の融合」現象による境界領域的サービスが多様に見られ,「放送」とすべきサービスを限定するという新しい課題が発生している。 第二に,放送も,通信と同様に,原則としてハードとソフトに分離して競争を促進すべきである。 第三に、インターネットによる放送類似サービスに関し、特に電子掲示板への書き込みが名誉殿損に当たるか、それとも表現の自由として保護を受けるべきかについては、一定の要件を満たせば前者であるとする流れにあり、プロバイダー責任法もその延長上にある。結局は、被害者の人権と「通信の秘密」・「表現の自由」のいずれをより重視すべきかを個別に判断せざるを得ず、その法的リスクが大きくなる場合もある。これは放送についても同様であり、実際に近年、放送番組を人権等の観点から規制するケースが増えつつある。今後は、予想外のリスクを少なくするような制度を目指すべきである。 第四に、放送・通信によるビジネス上の情報提供が同様の法的リスクに晒されるケースも増えている。この場合の被害者の多くは一般消費者なので、古物営業法、風適法、児童買春・児童ポルノ法、出会い系サイト規制法、迷惑通信規制のための諸立法などによって規制されることが多くなってきている。この場合は、第三で取り上げた精神的自由にかかわるケースと異なり、より厳しい事前規制が採られており、この方向は是認すべきである。
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