研究概要 |
1 本研究は、公的職務の担当者の汚職に対する刑事規制のあり方について,国際的な動向を視野に入れつつ総合的な検討を加えようとするものである。本年度は,研究の初年度にあたるため,考察の対象とすべき問題点を明らかにして,次年度以降深めるべき検討課題を絞り込むことに重点を置いた研究を行った。 2 まず,我が国の汚職の実情について情報収集を行い,分析を加えた。また,賄賂罪に関するこれまでの裁判例についても集中的な検討を加え,そこにおける解釈論上の問題点を明確化するとともに,さらには立法論的な課題についても考察の対象とし,いくつかの論点を摘出することができた。加えて,公職者あっせん利得処罰法についても,検討を加え,その問題点を明らかにする作業を行った。 3 海外の状況については,まず,OECD贈賄条約,ヨーロッパ評議会の汚職に関する刑法条約,国連の国際組織犯罪条約等の諸条約について分析を進め,それらについての問題点を具体的に把握する作業を進めた。次いで,ヨーロッパ諸国のうち,とくにドイツの法制について,その実情の把握に努めるとともに,そこにおける問題点に立ち入った分析・検討を加え,それにより,次年度以降検討すべき課題を明らかにすることができた。さらに,アジア諸国については,韓国の状況について海外調査を実施し,同国における汚職の実情や賄賂罪規定の問題点について,重要な知見を得ることができた。 4 以上の成果を踏まえ,次年度はさらに検討すべき具体的論点を絞り込みつつ,それらに関する実質的な考察を加え,具体的提言への見通しをつけることを目指したいと考えている。
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