本研究調査は、先進国で普及著しい新情報通信技術(ICT)が日本・韓国・台湾の政治の現場でどの様な影響を及ぼしているかを検討した。アンケート結果によると、依然マスメディアの影響は無視出来ないが、インターネットを利用した政治広報に今後注目しなければならないと議員が感じていたことがわかった。また、選挙公約の形成過程では、韓国のスタッフの関与が大きく、台湾では民間シンクタンクの関与が大きい。さらに、地方議員のネットワークは政策形成だけでなく、選挙情報において依然重要な役割を担っていると判断された。 日本の国会議員HPの分析では、3年前より議員間のデジタル・デバイドが解消に向かいつつあり、主要政策面では選出区分、衆参、世代間で言及される領域の差がある一方で、自民党内の派閥ではそれは見られなかった。台湾政治では新ICTの導入が初期・発展期にあった。多くの議員は技術の重要性を理解し、環境設備も進む。しかし、実際の運用では多くは主として情報提供に使われている。新興のマスメディアとして、インターネットの即時性と低コストはいままで民主政治のある障害を克服可能かもしれないが、現段階では「すばらしいものだが、それほど売れていない」状態にある。世界の中でも新ICTの普及目覚しい韓国からは、戦後民主主義や選挙制度から同国の特徴や現状に至る歴史的分析、政治制度の進化過程、今後の展望にわたり包括的な知見とインターネット登場後の社会状況が検討された。 以上のように、技術的進化と普及が絶えずいたちごっこになる政治と技術の関係において本報告書は、東アジアの2000年代初めの様相を記し、今後のこの分野に関する研究の発展につながる礎になることが期待される。
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