研究概要 |
本研究の目的は、1980〜2000年以降の期間について、産業別に情報技術(IT)導入の経済的効果を定量的に分析し、今後のIT戦略の指針となる資料と方向性を提示することである。具休的に、IT導入の産業別の効果を分析するための基礎データとして、経済産業「情報処理実態調査」、財務省「法人企業統計」「有価証券報告書」などの資料を基礎にして「情報装備ストック(情報化投資によって形成された資本ストック)」を1980〜2000年以降まで産業別に推計した。そして、IT導入による経済的効果を分析するための手法として、成長会計、DEA(Data Envelopment Analysis:包絡分析法)および生産関数フロンティアを用いた効率性分析という3つの分析手法を取り上げ、主として生産性の向上という観点から分析を行い、その分析結果を日本語および英語の論文としてまとめて公表した。 またIT導入の経済効果を,実際に導入する産業とそれをサポートする産業の両面からも分析した。結果として、我が国において、IT導入の経済効果は1980年代後半に比べて90年代前半において全調査産業で低下しており、その後90年代後半において若干改善したものの,ニューエコノミーの存在を明確に確認することはできなかった。一方,IT導入の経済効果を引き出すためには,ITそのものに加えて,それを活用して付加価値を生み出すためのノウハウが必要と考えられる。我が国においてこれらを提供している業種は情報サービス業であるため、情報サービス業の費用構造に関して分析したところ,同業界の下請け構造の存在,収益性の高いパッケージソフトの不在等が,ITを導入した企業において調整コストの増加を招いている可能性があることを示唆する結果がえられた。
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