研究概要 |
本研究の目的は、1980〜2000年以降の期間について、各産業別に情報化投資の経済的効果を定量的に分析し、今後のIT戦略の指針となる資料と方向性を提示することである。平成13年度は、主に、本研究に関連する基本資料および基礎データの収集、上場企業の有価証券報告書のデータ収集および整理、データ分析のための情報処理システム(分析手法の開発、数理分析、データベース構築などを行うシステム)の再構築を行った。そして、構築した情報処理システムを用いて、試行的に産業別・年代別の「情報装備ストック」の推計と分析を行い、その結果を論文にまとめて、公表した。 次に、平成14年度には、情報技術の導入による経済的効果を分析するための手法として、成長会計、DEA (Data Envelopment Analysis:包絡分析法)および生産関数フロンティアを用いた効率性分析の3つの分析手法を取り上げ、定量分析を行った。これらの分析の結果は、廣松毅他「IT(情報技術)の経済的効果に関する実証分析」として論文にまとめるとともに、ソウルで行われた国際コンフェランスにおいて招待講演を行った。 また平成15年度は、IT導入の経済効果を実際に導入する産業とそれをサポートする産業の両面から分析した。結果として,わが国において、IT導入の経済効果は80年代後半に比べて90年代前半において全調査産業で低下しており、その後90年代後半において若干改善したものの,ニューエコノミーの存在を明確に確認することはできなかった。一方、IT導入の緕済効果を引き出すためには、ITそのものに加えて,それを活用して付加価値を生み出すためのノウハウが必要と考えられる。わが国ではこれらを提供している業種は情報サービス業であるため、その産業の費用構造を分析したところ,同業界の下請け構造の存在,収益性の高いパッケージソフトの不在等が,ITを導入した企業において調整コストの増加を招いている可能性があることを示唆する結果がえられた。
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