研究概要 |
本研究の目的は,市民社会の不可欠な認識論的役割を果たすNPOの機能を明らかにするために,新たなるアプローチを提不することである.理論的に言うと,NPOの経済学を「1つの特殊研究」として展開するのではなく,専ら「経済効率性」の側面からしか考察しえない従来の経済学に対して,方法論的な再検討を要請するものでなければならない.この共同研究では,具体的なNPOの理論分析・実証分析を通じて,新たな認識論的分析が可能であることを示そうと考えた.法体系も「1つの意味論システム」と解釈できるから,「法と経済」というアプロチをとることが,われわれの目的遂行には有効であると考えた. 本年度は研究の初年度であるが,こうした大きな研究目的のための出発点を確立しようとさまざまな工夫を凝らした.1つの試みとしては新たなる側面として,NPOが発行する「地域通貨」の問題に焦点を当てた.研究代表者の中込は,アメリカ・カナダにおける地域通貨の実態調査を実施し,帰国後その成果を「なぜ地域通貨問題を重要と考えるか」という論文にまとめた.(さらに新たな論文を執筆中である.)また,地域通貨の法的問題についても,現在,内野が中心となって研究を進めており,次年度中に新しい論文が完成する予定である.これらによりNPOが有する市民社会的な意味論的意義が浮き彫りにできると考えている.また,芹田はNPOマネジメントをやはり金融的側面に佳占を絞ってミクロ経済学的に考察中であり,宮原はNPOと政府の関連性を大きなマクロ的視点から考察中である.これらはともに次年度,海外での研究を計画しており,その内容については研究者同士の議論を繰り返し行うことで,より質的に高度なものとなるよう努力中である.次年度以降も,これら基本路線を維持しつつ,さらに研究の深化が達成できるようお互い協力して努力していきたいと考えている.
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