研究概要 |
研究実施計画にしたがい,平成15年度は次のような国際銀行業史に関する研究実績が達成された。 (1)英系海外銀行の分析 研究協力者である西村閑也が筆写にて収集した,ロンドン・ギルドホールに所蔵されている1890年から1914年までの期間を対象とした英系海外銀行であるチャータード銀行の各地所在の店舗別のバランス・シートと,北林がデジタル・カメラをもちいて収集した詳細な営業報告書を比較・対照し,チャータード銀行内での資金循環のパターン確定する作業に着手した。またマーカンタイル銀行と香港上海銀行については,14年度に収集した画像資料を分析しつつある。さらに,研究協力者である蕭および菅原が中華人民共和国の上海企業史センターに保存されている,戦間期の香港上海銀行上海支店(同時に米系国際銀行インターナショナル銀行もの資料を収集・分析しつつある。また英印間の貿易構造の分析も,研究協力者の西村雄志により進められつつある。 (2)ロンドン金融市場と国際銀行の関連分析 引き続き,鈴木が海外銀行の刊行社史の入手や金融業界誌(紙)の関連する記事の収集を行い,既存研究の達成点や問題点を整理した。関係する英国議会報告書を検索・入手することで,英系海外銀行の設立過程の解明も進められつつある。さらに,14年度に収集した(英国の)シティ銀行とロンドン合本銀行の画像資料を整理して,ロンドン金融市場におけるロンドン手形交換所加盟銀行と国際銀行との具体的な取引関係の分析を行いつつある。 (3)非英系国際銀行の活動の分析 赤川が渡独してドイツ銀行アーカイヴズで独系国際銀行の社史や独亜銀行関連の文書を収集し,分析しつつある。フランスに関しては、矢後の斡旋によりフランス銀行史の泰斗A.プレッシィパリ大学名誉教授を研究会に招聘して,仏系国際銀行業の歴史について研究指導を受けた。同様に国別の国際銀行史を対比させる意図から,石井寛治東京経済大学教授に横浜正金銀行史の研究動向に関する講演を依頼し,多大の示唆を得た。
|