研究課題
今年度は研究代表者が以前から行っていたリジッド解析幾何学に新たな視点がもたらされた。近年、数理物理学と幾何学に深い関連があることが認識されて来たが、コンセビッチ・深谷賢治らによるホモロジカルミラーで対称性の研究が進み、シンプレクティック多様体から深谷圏という圏が構成されるようになった。ミラー多様体を構成し、深谷圏がミラー多様体の導来圏と同値になることを示せばミラー対称性予想は解決される。この構成にリジッド解析幾何学が有効であることがコンセビッチ、深谷により指摘されている。このように有力になってきているにもかかわらず、現在までリジッド解析幾何学の基礎付けは十分になされていない。リジッド解析幾何学は志村多様体の数論的研究においても本質的な役割を果たすため、研究代表者は加藤文元氏(京都大学)との共同研究として、基礎をまとめた本を執筆中である。この本は単に現在知られている結果を総合するのではなく、ネーター的でない場合も含む十分一般的な(ミラー多様体の構成に使用するためには必要である)堅固な枠組みを構成し、提供することを目標とする、研究論文に近い性格を持つものである。来年度に第一分冊を完成させる予定であるが、この理論は現段贈ですでに注目を浴びており、2004年9月に京都で行われる国際シンポジウム「モジュライ空間と数論幾何学」(日本数学会)におけるサーベイシリーズとしての講演が決定している。
すべて その他
すべて 文献書誌 (5件)