研究課題/領域番号 |
13440031
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
磯 祐介 京都大学, 情報学研究科, 教授 (70203065)
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研究分担者 |
今井 仁司 徳島大学, 工学部, 教授 (80203298)
山本 昌宏 東京大学, 数理科学研究科, 助教授 (50182647)
西村 直志 京都大学, 学術情報メディアセンター, 教授 (90127118)
登坂 宣好 日本大学, 生産工学部, 教授 (00059776)
大西 和榮 茨城大学, 理学部, 教授 (20078554)
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キーワード | Tikhonov正規化法 / 逆問題 / 非適切問題 / 数値解析 / 応用解析 / 第1種積分方程式 / 多倍長数値計算 / スペクトル法 |
研究概要 |
多倍長数値計算環境下におけるTikhonov正則化法の離散化とその数値計算を念頭に置き、課題研究最終年度の研究を行なった。非適切問題に対する種々の正則化法に対する数学解析的な研究では、適当な「数学的」な仮定下で定性的な議論が行なわれることが多い。諸データに誤差を含む場合においても誤差の挙動に対する仮定が設けられることも多く、これらの数学的諸結果を現在の汎用倍精度環境での計算機による数値計算に反映することは困難と考えられる。このような事情から、本課題研究では、研究2年目(平成14年)の途中から(10進法で)100桁以上の有効数字を持つ多倍長環境を利用した正則化法に一つの焦点を当てて研究を行なった。特にTikhonov正則化法に対しては、既に確立された多くの数学的な諸結果を踏まえた、信頼性の高い数値計算の実現を目指し、正則化パラメータの選択問題などに対する数値実験を丁寧に行ない、重要な知見を得た。 得られた最も重要な知見は、Tikhonov正則化法のパラメータ選択手法として現在しばしば用いられているHansenのL-curve法には大きな欠陥があることを、数値実験と通して指摘した。この離散化問題では、データに混入する誤差と離散化誤差に加え、計算桁数(浮動小数点システムに置ける丸め誤差)を考慮した議論が行なわれるべきであり、計算桁数によって適切な正則化パラメータの選択は大きく異ることが多倍長数値計算を利用した数値実験によって確認された。さらに、多倍長数値計算環境を利用した高精度計算においては、離散化手法もこれまでの差分・有限要素近似に基づくものでは不十分であり、スペクトル法に準じた手法の適用が有効であることも確認された。 理論的な研究では、分担者の山本が誤差の混入した場合に正則化法パラメータを0に近づける際、誤差の満たすべき漸近挙動と収束率との関係について、見通しの良い評価を与えている。 さらに、本研究で提唱する多倍長数値計算環境の高速化について、研究協力者の藤原宏志は64bit機を利用した環境の設計と実装を行ない、実用に供するレベルのものを作成した。
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