研究概要 |
(1)3次元空間を運動する1個のDirac粒子-スピン1/2の相対論的荷電粒子-が量子輻射場と相互作用を行う量子系のハミルトニアンHの非相対論的極限について研究した.Hが作用するヒルベルト空間は,Dirac粒子のヒルベルト空間H_Dと量子輻射場のヒルベルト空間F_<rad>(1光子ヒルベルト空間上のボソンフォック空間)とのテンソル積ヒルベルト空間である.Hの非相対論的極限は,Hに含まれるパラメーター(真空中の光速)に関するスケーリング極限として定義される.Dirac粒子のポテンシャルや光子の運動量切断関数に関する一般的仮定のもとで,Hは,非相対論的極限において,スピン1/2のPauli-Fierzハミルトニアンに,強レゾルヴェント収束の意味で収束することを証明することができた.ここで,スピン1/2のPauli-Fierzハミルトニアンというのは,スピン1/2の非相対論的荷電粒子が量子輻射場と相互作用を行うさいのハミルトニアンである. (2)Dirac粒子と量子輻射場の相互作用の効果は,第1近似的には,Dirac粒子に働くポテンシャルの変化として取り扱うことが可能である.この変化を被ったポテンシャルを実効ポテンシャルと呼ぶ.ハミルトニアンHについて,(1)のスケーリングとは異なるスケーリング極限を考察し,Dirac粒子の実効ポテンシャルを導出した.この実効ポテンシャルは,以前に得た非相対論的モデルの実効ポテンシャルの相対論版になっていることも示される.
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