研究分担者 |
曽我 日出夫 茨城大学, 教育学部, 教授 (40125795)
望月 清 中央大学, 理工学部, 教授 (80026773)
吉富 和志 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (40304729)
伊藤 宏 愛媛大学, 工学部, 助教授 (90243005)
中村 玄 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50118535)
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研究概要 |
量子物理学に現れるSchrodinger作用素に対する散乱問題を中心にして,散乱現象の解析と逆問題に関する理論的研究を行った.スペクトルデータを詳しく解析するという順問題の方向と得られたスペクトルデータから元の作用素を求めるという逆問題の両方向にわたってすぐれた成果が得られた.その一部は次のようなものである.研究代表者は双曲多様体上での逆スペクトル理論という新しい研究方向を開拓した.この方法により逆問題において本質的な役割を果たすFaddeevのGreen関数が双曲多様体上のFloquet作用素のGreen関数に置き換えられ,幾何学的意味が明瞭になった.またユークリッド空間における境界値逆問題と双曲多様体上での境界値逆問題が同値であることが示されたことにより,ユークリッド空間における境界値逆問題の結果が双曲多様体上にそのまま拡張された.新しい成果として,例えば算術曲面のように無限遠が尖点である場合のSchrodinger作用素のスペクトルデータの導入とそれによるリーマン計量の局所的変形の再構成という幾何学的逆問題が解決された.さらにユークリッド空間における応用としてディリクレ-ノイマン写像を境界の小さい部分で知ることにより境界付近でのポテンシアルや電気伝導係数を同定するという逆問題を解決した.望月-Trooshinは一次元のDirac作用素において区間の内部のスペクトルデータから作用素の一意性を示した.伊藤-田村はAharanov-Bohm効果を研究しδ-関数型の磁場をもつSchrodinger作用素の漸近解析を行った.吉富は亀裂の入った帯状領域でのラプラシアンのバンドスペクトルについて考察した.曽我は弾性波の漸近解の構成を行なった.中村は障害物による音響散乱,亀裂の同定などの逆問題を考察した.
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