研究課題/領域番号 |
13440058
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
牧野 淳一郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (50229340)
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研究分担者 |
穂積 俊輔 滋賀大学, 教育学部, 助教授 (90229203)
野本 憲一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (90110676)
須藤 靖 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (20206569)
小久保 英一郎 国立天文台, 理論天文学研究系, 助手 (90332163)
羽部 朝男 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90180926)
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キーワード | 銀河形成 / 宇宙の大規模構造 / ダークハロー / N体計算 / 並列計算機 / 専用計算機 / ツリー法 / 衛星銀河 |
研究概要 |
本研究の最終目標は、いわゆる「倭小銀河問題」を解明することであった。これは、現在の標準的な宇宙モデルであるコールドダークマター(CDM)宇宙モデルでの重力不安定による構造形成理論にもとづいた銀河形成シミュレーションでは、観測に比べて10倍程度と非常に沢山の矮小銀河が生まれてしまうという問題である。 昨年度は、高分解能のN体シミュレーションでこの問題がどういうものであるかを理解するため、専用計算機GRAPE上で効率良く動作する並列ツリーコードを開発した。今年度はこの計算コードを使ってシミュレーションを行い、以下のような成果を得た。 ・最大6000万粒子までを使ったシミュレーションを行い、ダークハローの構造の宇宙論モデルへの依存性を明らかにした。 ・親銀河のなかでの衛星銀河の進化について、従来ほとんど例のなかった親銀河、衛星銀河共にN体モデルで表現したシミュレーションを行い、従来の理論的な理解に問題があったことを明らかにした。 最初の結果については、Fukushige and Makino(2003)等にまとめた。もっとも重要な結果は、標準CDMモデルで得られていたダークマターハローの密度プロファイルが、開いた宇宙モデルや、最近の観測が示唆する宇宙項を持つ平坦な宇宙モデルでも得られた、即ちハローの構造がユニバーサルなものであることが明らかになったことである。 次に、倭小銀河の数に直接関係する、親銀河内の衛星銀河の進化についてであるが、これは従来の理論的な理解に大きな問題があったことが明らかになり、正しい扱いをするための方針も与えることができた。従来の理論的な理解では衛星銀河の軌道は親銀河からの動力学的摩擦によって進化し、衛星銀河自体の構造は親銀河からの潮汐力によって受動的な進歩をする。このこと自体は定性的には正しいが、従来の扱いでは動力学的摩擦を、特に衛星銀河が親銀河の中心に近づいた時に正しい値よりも数倍程度大きく見積もっていた。また、軌道進化は衛星銀河からの質量損失と強くカップルすることが数値シミュレーションから明らかになった。つまり、衛星銀河から質量をはぎとるためのエネルギーは、軌道運動から供給されているのである。このことは、衛星銀河の進化は単純な見積もりよりも速く、矮小銀河の現在の数は銀河の形成時期、言い換えると宇宙モデルに依存するという可能性を示唆するものである。
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