研究課題/領域番号 |
13440067
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松井 哲男 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (00252528)
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研究分担者 |
藤井 宏次 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (10313173)
太田 浩一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30012496)
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キーワード | QCD / クォーク・グルオンプラズマ / カイラル相転移 / 高エネルギー原子核衝突 |
研究概要 |
太田は、有限温度での量子色力学(QCD)のカイラル相転移の問題に関連して、QCDゲージ場のトポロジカル電荷の揺動(トポロジカル感受率)の計算を、QCDの有効理論であるNambu-Jona-Lasinio模型で行い、格子ゲージ理論による数値計算結果と比較して、この模型の結果の物理的意味を調べた。トポロジカル感受率は、(この有効理論の弱点である)「閉じ込め」の問題を避けて、有限温度でのカイラル対称性の回復を調べるのに適した物理量であり、また、スピン偏極した電子の深非弾性散乱の実験からも、その情報を得ることができる。この研究では、有限温度での格子ゲージ理論の数値計算結果を再現するように、模型のパラメータの温度依存性を決定した。この研究は、太田が学生を指導して行い、論文発表した。 藤井と松井は、高エネルギー原子核衝突で生成の期待されるクォーク・グルオンプラズマのシグナルとしてのJ/Ψ粒子の生成抑圧の問題の基礎研究として、高エネルギーJ/Ψ粒子と原子核の相互作用の研究を行った。J/Ψ粒子を大きさの凍結したカラー双極子と考え、原子核の中での多重散乱過程をランダムなカラー場中での双極子の伝播として、散乱行列をアイコナル近似で計算し、J/Ψ粒子の吸収がその通過する距離の増大とともにどのように起るか計算した。量子コヒーレンスを考慮した計算結果は、これまでの現象論的な模型で仮定されている指数関数的減衰と異なる緩やかな吸収が起ることを示しており、これはシグナルの問題に重要な意味を持つ。この成果は現在、論文投稿準備中。 また、この他に、松井は、量子場のダイナミクスの研究を、シュレーディンガー汎関数を用いた変分法によって行った。この研究は、もともとカイラル相転移の非平衡過程の記述を目的として始めたが、われわれの方法をボーズ・アインシュタイン凝縮の集団運動と安定性の問題にも適用した。この研究は、高地大学の津江助手との共同研究として進められ、現在、論文を執筆中。
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