研究概要 |
機械損失の小さな鏡材料の探索や鏡における機械損失の過程の理解のため、様々な材料の機械損失を独自に開発した手法によって測定した。 室温の干渉計において最も有望視されている鏡材料は、溶融石英である。そのため、国内外で製造されている十数種の溶融石英のQ値を測定した。その結果、10^6から10^7にわたる、種類によって大きく異なるQ値が測定された。TAMA300の最終感度のためには鏡のQ値が少なくとも2×10^7必要であることが計算されており、従来これは非常に困難と考えられてきた。しかし、我々の測定で、バルクの溶融石英としては報告例のない高いQ値,3×10^7を示す石英がいくつか見出されてた。また、アニーリングによってQ値が増加する石英もあった。このような各石英の差は、おのおのが含有しているOH基の量や熱遍歴に起因すると理解されている。さらに、多くの石英には、周波数が低くなると損失が小さくなる傾向があることが分かった。干渉計型重力波検出器の観測帯域は機械損失の測定の周波数よりも数桁低い。機械損失が観測帯域でさらに小さくなるならば、熱雑音はこれまでに予測されている以上に低減されることになり、期待が持てる。 今後は、石英の機械損失を決定する要因の特定、機械損失の周波数依存性の研究、最適な熱処理法の探索や積極的な石英材料の開発などを行う予定である。
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