研究概要 |
次世代レーザー干渉計重力波検出器における熱雑音の低減を目的とした研究をおこなった。 干渉計の原理的な雑音には、熱雑音、レーザー光のショット雑音、地面の振動の3つがある。この中でも鏡のもつ熱雑音は、次世代のレーザー干渉計の感度を制限する支配的な雑音源になると予想されている。揺動散逸定理によると、熱雑音の大きさは材料の損失に比例するため、機械損失の小さな材料を見出せば容易に熱雑音を低減することができる。われわれが独自に開発した不動点接触法を用いて材料固有の損失を評価し、低損失材料の探索をおこなった。 光学的な特性の観点から最も有望視されている鏡材料は溶融石英である。そこで、国内外で製造されている10数種の溶融石英のQ値を測定した。その結果、バルクの溶融石英としては報告例のない高いQ値,3×10^7を示す石英がいくつか見出されてた。また、アニーリングによってQ値が増加する石英もあった。さらに新しい知見として、多くの石英には周波数が低くなると損失が小さくなる傾向があることが分かった。石英以外にもサファイアやシリコンの単結晶のQ値を測定し、最高で10^8というこれまでにない高いQ値を得た。 以上と並行して、有限要素法のプログラム(ANSYS)を用いて、機械損失が熱雑音に与える影響を調べる手法を確立した。これを用いると、任意形状の鏡に対して、任意に分布した機械損失からの熱雑音を計算することができる。これにより、例えば鏡のコーティングの損失による熱雑音も評価できるようになった。 これらの研究成果により、次世代レーザー干渉計の熱雑音の問題を解決に向けて大きく前進させることができた。
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