研究概要 |
現代素粒子物理学では、自然界に存在する4つの力のうち、重力を除く3つの力を記述する「標準模型」の完成をみた。その標準模型において未解明の重要な研究テーマの一つが、「物質・反物質の対称性の微妙な破れ」(CP非保存)である。 本科研費研究では、CP非保存の重要なパラメータの一つであるCabibbo-小林-益川行列のユニタリティ三角形の角度φ_2を10%の精度で測定すること、および、高速度で安定に高効率で稼動するデータ収集システムの開発を行い、高ルミノシティでのデータ取得に備えることの二つを目的とする。実験は、つくばの高エネルギー加速器研究機構のBファクトリー加速器KEKBおよび測定器Belleを用い、それを改良しつつ行う。 KEKB-Belle実験は、最高ルミノシティも世界最高の〜5×10^<33>cm^<-2>s^<-1>を達成し、順調にデータをためている。そして2001年の夏に、約30fb^<-1>のデータの解析を解析してユニタリティ三角形の角度φ_1を測定し、sin2φ_1=0.99±0.14(stat)±0.06(syst)という結果を得て、B中間子系でのCP非保存を初めて示すことができた。 本科研費研究に関しては、PCによるイベントビルダは予定より早く完成し、2001年夏のシャットダウン中にBell測定器に組み込んだ。システムは多少のデバッグの後順調に稼動し、データを収集している。角度φ_2の測定に関しては、まずΒ^0(B^^^0)→π^+π^-の崩壊モードに絞って、そのバックグランドの低減を図っているところである。この崩壊モードは、理論的には「ペンギン汚染」があるものの、終状態が単純な2体なので、集率も大きい。反面、終状態が「ありふれた粒子」であり、とくにcontinuum(e^+e^-→uu^^-,dd^^-,ss^^-,cc^^-)からのバックグランドが重要である。そのため、並列高速計算機システムを購入して大量の事象をシミュレートし、いろいろなカットを試しているところである。
|