研究概要 |
本研究では,CP非保存パラメータφ_2の測定を目指していろいろな崩壊モードを解析した。実験は,つくばのBファクトリー加速器KEKBとBelle粒子検出器を用いて行った。KEKB加速器はデザインルミノシティ10^<34>cm^<-2>s^<-1>を2003年5月に達成し、その後も順調に記録を塗り替え、現在も世界一のルミノシティを誇っている。Belle実験は、2003年夏にシリコンバーテックス検出器を無事アップグレードし、現在さらにデータを蓄積中である。 本研究課題であるφ_2測定については、B^0(反B^0)中間子がπ^+π^-に崩壊するモードの統計を、2002年夏までの78fb^<-1>からほぼ4倍の253fb^<-1>(2004年夏現在)に増やし、CP非対称パラメータであるA_<ππ>とS_<ππ>について、次の結果を得た。 A_<ππ>=+0.56±0.12(統計)±0.06(系統)、S_<ππ>=-0.67±0.16(統計)±0.06(系統) すなわち、J/ψK崩壊モードでのCP非保存の発見に続いてこの崩壊モードでもCP非保存を確認するとともに、A_<ππ>が有意に0から離れていることから、初めて直接的CPの破れを強く示唆する重要な結果を得た(>4σ)。同時に所期の目的φ_2の測定についても、アイソスピンの関係などを用いてその領域を制限することができた。この結果が他の間接的な総合結果と一致することから、標準理論の要めである小林・益川機構の正しさを支持する結果であると言える。 当グループは、上記の解析を主体的に行うとともに、φ_2の測定に向けてa_1πの崩壊モードを探索し,まずは分岐比を測定することができた。また,購入した計算機ファームをフル回転して大量のモンテカルロデータを分担生成した。さらに,崩壊粒子の親がB^0中間子なのか,それとも反B^0中間子なのかを高い効率で判定する方法,および,コンティニュームをさらに効率よく抑制するさらに改善された方法を考案するなど、全体の解析にも貢献した。ハード面では、アップグレードされたバーテックス検出器において、初めてその信号をトリガーに組み込む作業、および,その性能向上等でも大きく貢献した。
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