宇宙粒子線中の超重核成分の高精度観測

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13440080
• 研究機関: 早稲田大学
• 研究代表者: 長谷部 信行 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 教授 (10127904)
• 研究分担者: 岡田 宏之 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 講師 (20308258) ; 宮地 孝 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 助教授 (20013401) ; 鷹野 正利 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 助教授 (00257198) ; 柴田 徹 青山学院大学, 理工学部, 助教授 (70082831)
• キーワード: Cosmic ray / Heavv nuclei / Origin of cosmic rays / Particle acceleration / Cosmic ray propagation / Heavy unclei exploler / Silicon detector / Cosmic ray source abundance

研究概要

Heavy Nuclei Explorer HNXミッションのENTICE実験は、宇宙線中の高エネルギー核成分Ne-Pbを高精度で観測することが目的である。元素同定能力としては、アクチニド元素に対しても0.5e(fwhm)の核電荷分解能で分離することを目標としている。核電荷を同定するためのΔE検出器として高性能シリコン検出器を使用し、1層400個のSi検出器からなるSi検出器アレイを2層配置して500MeV/n以上の宇宙線重粒子を測定する。
本研究ではENTICE実験に使用する大面積シリコン検出器の試作を行なった。従来の大型PIN-Si検出器は4インチウェファから製作するが、本研究では、重粒子検出用として世界で初めて6インチウェファのSi素材から大面積のSi検出器(92mm×92mm×300μm厚)を製作した。C-V特性、漏洩電流の温度依存性、標準α線線源による電荷収集の飽和特性など、基礎特性を調べた。更に、ΔE検出器としての性能を実証するために放医研のHIMAC重イオン加速器を利用して、検出器の肉厚に関する一様性の試験と核電荷の弁別能等、基礎テストを実施した。その結果、室温、飽和電圧(〜80V)に対して漏洩電流I<1μA、有感領域の非一様性は<1.0%であった。当初心配したウェファー中心部の偏析作用も認められず、粒子検出器として良好に動作することが明らかとなった。非一様性に付いてはウェーファの切出し時点で改善の余地があり、一様性は更に向上することが期待される。現状の段階でHNX搭載用の検出器の仕様に対して、基本的に問題無いことを確認した。
現在、HNX計画はNASAプログラムのPhase-Aの段階にあり、ENTICE実験の搭載機器の検討とPhas-B以降の設計・製作に向けて入念な概念設計を行った。詳細なPhase-A Reportを昨年2001年12月に提出した。

研究成果

• [文献書誌] N.Hasebe et al.: "The Development of Large Area Silicon Detector for Heavy Particles"Technical Report No. 2002-2, Adv. Res. Inst. for Sie. Eng. 2002-2. 1-1 (2002)
• [文献書誌] N.Hasebe et al.: "Large Area PIN-Type Silicon Detectors for Measuring Heavy Cosmic Ray Nuclei"Scientific Session of MEPhI-2002(Moscow). Vol.7. 65-66 (2001)
• [文献書誌] W.R.Binns et al.: "The Heavy Nuclei Explorer (HNX) Mission"Proc. of 27th International Cosmic Ray Conference (Hamburg). Vol.6. 2181-2184 (2001)
• [文献書誌] M.H.Israel et al.: "The Energetic Trans-Iron Composition Experiment (ENTICE) on the Heavy Nuclei Explorer (HNX) Mission"Proc. of 27th International Cosmic Ray Conference (Hamburg). Vol.6. 2231-2234 (2001)
• [文献書誌] A.J.Westphal et al.: "ECCO : Th/U/Pu/Cm Dating of Galactic Cosmic Ray Nuclei"Proc. of 27th International Cosmic Ray Conference (Hamburg). Vol.6. 2235-2238 (2001)
• [文献書誌] J.Adams et al.: "The Nucleon-Mission. A. New Approach to Cosmic Rays Investigation"Proc. of 27th International Cosmic Ray Conference (Hamburg). Vol.6. 2185-2187 (2001)
• [文献書誌] 竹村春礼他: "HNX搭載用大面積Si検出器の開発"名古屋大学太陽地球環境研究所「研究集会」高エネルギー宇宙粒子線. 研究会報告収録(印刷中). (2002)
• [文献書誌] 竹村春礼: "HNX搭載用大面積Si検出器の実用性評価"修士論文(早稲田大学大学院物理学及応用物理学専攻). 2月. 1-21 (2002)
• [文献書誌] 椎名厚仁: "6インチSi検出器の一様性"卒業論文(早稲田大学応用物理学科). 2月. 1-21 (2002)