研究課題/領域番号 |
13440081
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研究機関 | 高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
石原 信弘 高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50044780)
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研究分担者 |
田村 詔生 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (00025462)
山田 善一 高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教授 (00200759)
稲垣 隆雄 高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (60044757)
江村 恒夫 東京農工大学, 工学部, 教授 (40015053)
喜多村 章一 東京都立保健科学大学, 保健科学部, 教授 (60106599)
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キーワード | 二重ベータ崩壊 / ニュートリノ質量 / マヨラナ・ニュートリノ / ドリフトチェンバー / 運動量分析器 |
研究概要 |
ニュートリノ質量の存在が確定的となった今、質量の絶対値はいくらかということと、ニュートリノはマヨラナ粒子かディラック粒子かということが今後に残された大きな問題である。ニュートリノの質量が何故軽いかを自然に説明するシーソー機構(柳田、Gell-Mann et al.)はマヨラナ質量項を要求するので、この機構が正しいとするとニュートリノはマヨラナ粒子である。するとニュートリノレス二重ベータ崩壊(neutrinoless double beta decay,以後NDBDと略す)が生ずることになる。NDBDの半減期はマヨラナニュートリノ質量の2乗に反比例するので数十meV程度の有効質量感度<m_v>を得ようとすると、10^<26>-10^<27>年の半減期を測る能力が測定器に要求される。つまり数千molの崩壊核を収容するものでなければならない。一方2本のベータ線の運動エネルギー和をもってシグナル事象とするとき、統計的に処理する場合にはシグナル事象数はバックグラウンド事象数の揺らぎを越えるものでないと認識されない。予想されるバックグラウンド事象、特にガンマ線に起因する事象を除去しなければならない。NDBDシグナルのエネルギースペクトルはQ値にスパイク状に現れるので、Q値が高いほどガンマ線バックグラウンドは低い。特に3MeV以上になると、その傾向は著しい。この点に注目すると^<150>Nd (Q=3.37MeV),^<96>Zr (3.35),^<100>Mo (3.03),^<82>Se (3.0)が崩壊ソースとして有力であるが、それ自身が検出器となり得る^<76>Ge (2.04)と異なり、いずれもベータ線検出器が別途必要となる。 DCBA (Drift Chamber Beta-ray Analyzer)は二重ベータ崩壊で生ずる2つのβ線の飛跡を一様磁場中のドリフトチェンバーで捕らえ、運動量からエネルギーを求めるものである。熱量計型の検出器と異なり(1)ガンマ線には不感である、(2)電子、陽電子、アルファ線の選別が可能である、(3)2本の飛跡から崩壊点を数ミリ以下の位置精度で求めることが出来る、といった特徴を持つ。このためバックグラウンド事象を格段に少なくすることができる。これまでに、テスト装置として製作したDCBA-Tにより、崩壊ソース近傍に配置された^<207>Biから放出される内部転換電子の飛跡検出に成功し、^<150>NdをソースとしてNDBD探索を行っている。同時に^<207>Bi内部転換電子のデータを使ってエネルギー校正と分解能向上に努めている。これまでの研究からエネルギー分解能を上げるにはZ方向の位置分解能向上が最も有効であることが分かったので、そのための改良を行っている。 測定器に数十meVの<m_v>感度を持たせるためには検出器内部に数千molの崩壊核を収容しなければならない。これまでの研究から、限られた一様磁場空間に出来るだけ多くの崩壊ソースを、エネルギー分解能を損なわないで設置する方法を見出した。DCBAでは薄板形状にすることさえできれば、崩壊ソースを交換することも混在させることも容易である。核行列要素計算の信頼性はそれほど高くないため種々の崩壊核で実験することが重要である。今後は^<150>Nd以外にも^<82>Se,^<96>Zrや^<100>Moを使用することも視野に入れている。
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