研究概要 |
本研究では、高分解能の磁気スペクトロメーターを用いて、ハイパー核の生成、構造、崩壊の各側面からの実験的研究を行った。ハイパー核の生成に関しては、従来からラムダハイパー核の生成に使われる(π^+,K^+)反応ではなく、(π^-,K^+)反応を用いたラムダハイパー核の実験を行った。この反応では、中性子過剰なラムダハイパー核の生成が可能となる。測定の結果は、仮想的なシグマ粒子生成過程の重要性を示唆するものとなっている。また、π中間子の入射エネルギーを十分高くしてやると、仮想的にではなく実際に原子核内にシグマ粒子を生成することが可能となる。そのような測定によるシグマ粒子と原子核との相互作用に関する研究も行った。重いラムダハイパー核の構造に関しては、バリオン数89のラムダハイパー核の励起準位を精密に測定することに成功した。その結果、ポテンシャル中でのラムダハイペロンの有効質量を導き出すことに成功した。また、ポテンシャルの深さも従来信じられていたより1MeV程度深いことが判明した。ラムダハイパー核の弱崩壊に関して、世界で初めて中性子を高統計でかつ低バックグラウンドで測定することに成功した。得られた、中性子エネルギースペクトルは、これまでの予想に反してなだらかであることを示すものとなり、反応機構の見直しを迫る結果となった。 また、今後の研究の発展という観点から、現在建設が進められているJ-PARCと呼ばれる新しい加速器を使ったハイパー核に関する実験プログラムについて検討を行い、具体的な実験提案をまとめ上げた。
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