本研究の第一の目的は、本申請者らが最近発見した新しい低次系物質であるCu(001)-(9√<2>x2√<2>)R30°-InやCu(001)-c(4x4)-Inについて、高分解能角度分解光電子分光により、そのE_F近傍の電子状態を検討することにある。この一次元物質は、下地Cu(001)-(1x1)の射影ギャップ内に一次元「フェルミ面」を持つことが既に明らかになっている。本研究では、これを高い分解能で観測することにより、1次元電子系に特有な朝永-Luttinger液体、電荷密度波相転移などの現象について微視的情報を得ることを目指している。 本年度は、Cu(001)-c(4x4)-Inにおける電荷密度波相転移について、.電荷密度波ギャップの温度依存性の詳細な測定を行った。この電荷密度波転移は、構造的には秩序-無秩序転移の性質を有することから、強結合電荷密度波と考えられるが、電子構造的には、転移点でギャップが消失することから弱結合的でもある。電荷密度波ギャップの温度依存性はBCSの式で予想される振る舞いと非常によく一致し、電子的には完全な弱結合の描像が成り立つことが明らかになった。 今後、構造因子の臨界挙動の精密観測を進めて、転移の様相を明らかにする予定である。 また、表面磁性の測定のために、極低温磁気光学Kerr効果(MOKE)測定装置を開発した。
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