研究概要 |
低次元電子系を有する物質では、電子-電子、電子-格子などの相互作用のために、超伝導転移、電荷/スピン密度波転移、Mott転移など、物性の大きな変化を伴う相転移現象が見られる。低次元系におけるこれらの相転移現象は、ナノスケールでの「機能」を実現するうえできわめて重要なものと考えられる。金属単原子膜は、もっとも端的な形で実現された低次元物質であり、低次元物性物理のさまざまな概念を検証する場として興味深い。また、単原子膜の電気伝導性、磁性等の物性をコントロールすることができれば、有力なナノデバイスが実現すると考えられることから、近年、注目を集めつつある。 本申請者は、ここ数年、金属単原子膜の低次元物性の探索を積極的に進めてきた。本研究においては,固体表面上に高周期典型金属元素が形成する単原子層で実現される低次元金属について,その原子配列やバンド構造,また,相転移現象などについて研究を行った。高周期典型金属元素は,金属性と共有結合性の中間的な結合性を有する。このことを固体物理の言葉に言い換えると,強い電子-フォノン結合ということになる。この性質と,表面特有の低次元性とが,組み合わされることにより,密度波,超伝導などの新奇な現象が期待できるのではないか、というのが本申請者の基本的な作業仮説となっている。 本研究では,In/Cu(001)系における電荷密度波相転移について角度分解光電子分光と表面X線回折により検討し電子系および格子系の臨界点付近の挙動を明らかにし,相転移の微視的機構について包括的な描像を提出した。Ti/Pd(001)表面合金における格子歪み及び水素吸着誘起構造変化について,角度分解光電子分光により2次元表面共鳴バンドの分散を測定し,これに基づいて構造変化の電子論的機構を明らかにした。また,Al/Pd(001)表面合金における2次元合金島の拡散機構を走査トンネル顕微鏡法により検討した。
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