研究課題/領域番号 |
13440096
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
伊東 千尋 和歌山大学, システム工学部, 助教授 (60211744)
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研究分担者 |
白井 正伸 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30303803)
秋元 郁子 和歌山大学, システム工学部, 助手 (00314055)
神野 賢一 和歌山大学, システム工学部, 教授 (80024339)
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キーワード | 擬一次元有機電荷移動錯体 / TTF-CA結晶 / スピンソリトン / 電子スピンエコー / 光誘起相転移 / 赤外反射分光 |
研究概要 |
1.光誘起構造層相のスピンエコー検出パルスESRによる研究 可視パルスレーザ(523nm)を低温(T=4K)でTTF-CA結晶に照射し、レーザ光照射下でスピンエコー検出パルスESR測定をおこなった。積層軸に垂直な偏光を用いた励起の場合、未照射の場合に得られるESRピークがほぼ一様に減少するのに対して、積層軸に平行な偏光励起の場合、ESRスペクトルはほとんど変化しなかった。この結果は、積層軸に垂直な偏光を持つレーザ光の照射により光誘起相転移が効率良く生じることを示唆し、光学反射をプローブとした従来の研究結果と一致する。さらに、パルスレーザ光とスピンエコーを誘起するマイクロ波パルス対照射の時間差を変化させ、時間分解ESR測定を試みた。この結果、レーザ光照射直後からクロラニル(CA)分子に関係するスピンソリトンの信号が減少し、時間とともにESRスペクトルが変化することがわかった。 2.TTF-CA類似物質TTF-BA結晶の作成 光誘起相転移の物質的な因子を明確にするには、TTF-CA結晶と類似の物質において双安定性、光照射効果を明らかにする必要がある。そこで、アクセプター性の弱いBA(ブロマニル)分子を用いてTTF-BA結晶を作成した。気相法で得られた結晶は、従来報告されている液相成長の結晶とは全く異なるFT-IRスペクトルを示した。液相法では、溶媒分子の混入による構造、双安定性の変化が生じると考えられる。また、BA分子のカルボニル基のピーク位置より電荷移動度を見積もると、ρ〜0.4程度であった。この電荷移動度は、TTF-CAの中性相(ρ〜0.3)よりもわずかに大きい。また、試料の赤外反射スペクトルを室温から4Kの間で測定したが、カルボニル基のピーク位置から見積もられる電荷移動度に大きな変化は認められなかった。この結果は、TTF-BA結晶は熱誘起相転移を起こさないことを示唆する。
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