新強磁性物質Ca(La)B_6に関する衝撃的な報告が行われたのは1999年「ネイチャー」の2月号であった。我々はアルニューム・フラックス法により純良資料の作成に成功し、国内で初めて実験的に強磁性を確認した。さらに電子スピン共鳴法を用い、この新しい型の強磁性機構解明の端緒を、世界に先駆けて切り開き始めた。問題は0.5%という少量のLaドーピングによりCaB_6が強磁性になるということであり、従って、大事なことは試料の高純度化にある。これまでの各所の研究結果のばらつきは試料純良性のコントロールができていないところにあると考えられる。我々は本研究により、現時点で可能な最高純度の原材料の入手が可能となり、更なる研究を開始した。CaB_6は原材料酸化物のボロン還元により作成するが、汚染防止のため必要となる各種炉材の綿密な吟味も併せて行った。次いで試料作成のための電気炉の吟味を行い、高性能真空置換型マルチ雰囲気炉を完成させた。この炉は温度と保持時間をワンステップとして、16ステップの精密な温度コントロールができ、結晶核発生制御のための温度コントロールを可能とする。これによって比較的大きな良質単結晶作成を目指すことができた。作成された試料のキャラクタリゼーションはX線回折測定、電気抵抗測定、磁化測定のほかにEPMAによる試料表面の均一性チェック等も行った。以上の如き素性の判った試料に対して、既設電子スピン共鳴装置により、これまで発表したESR研究結果の再確認を行うことができた。さらに試料の厚み依存性など新規な知見も得られ、研究が進展している。
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