研究概要 |
新強磁性物質Ca(La)B_6の衝撃的な報告が行われたのは、平成12年「Nature」の2月号であった。ところがそれ以降、理論的な論文が次々と出る一方で実験の論文は殆ど姿を現さなかった。理由は試料作成の困難さにあった。即ち、融点が2,500℃と高く溶融状態でガス相と共存するからである。我々は本質解明のブレイク・スルーは純良大型単結晶の作成にあると考え不純物や欠陥をコントロールした純良単結晶作成法の確立を第一の目的とした。これにより強磁性を支配していると考えられる試料内の自由電子の確実な把握が可能となる。このため出発点としての試料原料の高純度化が不可欠であったが幸い高価ではあるが6Nの原料が入手可能となり、これを使用し純良大型単結晶作成を目指した。 我々はアルミニウム・フラックス法により純良試料の作成に成功し、国内で初めて実験的に強磁性を確認した。さらに電子スピン共鳴法を用い、この新しい型の強磁性の機構解明を、世界に先駆けて切り開いた。我々は電子スピン共鳴により、強磁性相が表面近くに偏在し、その磁気モーメントが表面と平行になろうとするという事実を発見した。Ca(La)B_6系新強磁性物質に対する電子スピン共鳴の適用は1)電子濃度依存性、2)試料角度依存性、3)マイクロ波周波数依存性、4)温度依存性、など多岐にわたっており、これらの測定を行うことにより新しい型の強磁性Ca(La)B_6の系に対してそのメカニズムをかなりの程度まで解明することができたと考えている。
|