エキゾチック超伝導体のギャップ異方性をフェルミ面上へマッピングすることを目指した研究を進めている。特にs波電子対を持つにもかかわらずギャップが非常に異方的であるホウ炭化物超伝導体YNi_2B_2Cの零ギャップの位置を、角度分解超音波吸収を手段として決定すること、さらに不純物による等方的ギャップへの変化を直接観測することを目標とした。そこで、第1年度には、極低温での超音波測定を行うための希釈冷凍機システムを導入し、以下の研究を進めた。 1)超伝導体単結晶試料の合成 モデル物質として異方的s波超伝導体であるホウ炭化物YNi_2B_2CおよびY(Ni_<1-x>Pt_x)_2B_2C、d波の重い電子系超伝導体CeCoIn_5の単結晶育成を行った。前者はFZ法、後者はFlux法による。 2)超音波測定 既存の装置を改造し、超音波吸収係数の測定を可能にした。さらに^4He冷凍機、^3He冷凍機の整備を行い、YNi_2B_2Cの吸収係数の予備測定を進めた。この結果、k_x-k_y、面内で点状にギャップが消失している可能性が示唆された。 3)希釈冷凍機の整備 今年度導入した^3He-^4He希釈冷凍機を整備た。まもなく極低温・磁場中での超音波測定が可能となる。これを用いた音響dHvA効果によるフェルミ面の形状測定、吸収係数によるギャップ異方性マッピングを行う予定である。 4)共同研究 ギャップ異方性を観測する別の手段として混合状態における熱伝導度測定が注目されている。東大物性研究所との共同研究により、YNi_2B_2Cにおいてk_xk_y面内で点状にギャップが消失していることが確認された。また、CeCoIn_5についても東大物性研究所との共同研究により角度分解光電子分光測定を進めている。
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