昨年度までに整備を完了した超音波吸収測定装置と冷凍機を用い、ホウ化物超伝導体YNi2B2Cの超伝導ギャップ異方性の角度分解測定実験を行った。FZ法で育成した単結晶YNi_2B_2Cにおいて、超音波吸収の温度依存性を、縦波および横波の全ての独立な弾性モードを測定した。特に縦波の弾性モードが顕著な異方性を示した。すなわち、[100]方向の縦波モードの吸収係数がT^1の温度依存を示し、[110]および[001]方向の縦波モードはT^3の高いべきの温度依存性を示した。この結果は、[100]方向に多くの準粒子励起が存在し、[110]および[001]方向の準粒子励起は少ないことを示しており、超伝導ギャップが[100]および[O1O]方向にゼロ、すなわちノードを持つことを意味している。この結果は、磁場中熱伝導率の実験結果から示唆されたYNi_2B_2Cのノード位置とも矛盾しない。この研究以前、例えば異方的超伝導体Sr2RuO4のギャップ構造は、超音波測定と熱伝導測定において矛盾する結果が得られていた。これは、単結晶試料の間題で全ての独立な弾性モードの測定をすることが出来なかったことが原因である。本研究では、大型良質結晶の育成に成功し、このため全弾性モードの測定が可能となったので、ギャッブ構造を正確に決定することが出来た。 以上の結果より、超音波測定が超伝導ギャップノード位置の検出に威力を発揮することが実証できた。さらに、ホウ炭化物がs波対称性をもちながら非常に異方的な超伝導ギャップをもつという新しいタイプの超伝導体であることが立証できた。
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