研究概要 |
(1)酸化物高温超伝導体およびその他の酸化物伝導体に関する研究 キュービックアンビル型極低温高圧装置を用い,正孔ドープ型超伝導体La_<2-x>Sr_xCuO_4に関しては,CuO_2面内抵抗と超伝導の関係を調べた。c軸加圧によって,伝導面における伝導を2次元から異方的な3次元フェルミ液体状態にすることが超伝導消失に関係あることが分かった。電子ドープ型高温超伝導体Nd_<2-x>Ce_xCuO_4については,c軸伝導の特長および超伝導転移温度の圧力依存性をx=0.015およびx=0.017の試料について明らかにしつつある。 モット絶縁体YTiO3に関する弾性率の測定から,強磁性転移にともなう磁歪に関する異常を観測した。更に,本物質における構造相転移の兆候を観測した。 (2)Ru酸化物に関する研究 我々は,反強磁性モット絶縁体Ca_2RuO_4において圧力誘起の遍歴強磁性金属相の発現を報告している。本年度は,この物質のP-T相図を完成した。今後は,より高圧において超伝導が発現しないかをさぐる研究を,高圧セルの開発と純良単結晶の育成により行っていく。Sr_2RuO_4の超伝導における歪み依存性の研究は継続中である。 (3)スピネル化合物における超高圧物性に関する研究 我々は,ある種の超伝導性スピネル化合物に圧力を印可すると,超伝導絶縁体転移が起きることを発見した。バルクの物質における圧力誘起超伝導絶縁体転移の発見は,これが初めてであり,現在投稿中である。純良試料の育成準備を行っており,各種の物性測定から今後,この超伝導絶縁体転移の起源を探ってゆく予定である。 (4)f電子系化合物に関する研究 UCu_2Snの強的四極子秩序の直接的な証拠となる,自発歪みの発生について専用の熱膨張系を製作することにより成功した。CeRhSnについては,弾性率の測定から結晶場存在の妥当性について検証中であり,今後詳細を報告する。
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